甘咬みは子犬のお仕事!子犬にとって正常な行動の1つです!
生後4~6ヶ月頃は、乳歯から永久歯へ生え変わる時期で身近にあるものをかじりたくなりますが、物をかじることで学習する時期でもあります。この時期を過ぎると甘咬みは落ち着くことが多いです。しかし『子犬の正常な行動だから』『甘咬みだから』『大人になれば自然と治まるから』と考えるのは大変危険です。甘咬みがみられる期間は、人には決して咬みついてはいけない事を教える重要な時期で、放置しておくと家族や人に咬みつくことが学習され危害を与える行動につながることもあります。
甘咬みへの対応方法
〇咬みつく力の抑制(咬みつき抑制)は、咬みつく力が弱い時期の4~5ヶ月齢までにしっかり教えましょう!
永久歯になると咬む力も破壊力も強くなり、人にケガをさせてしまう可能性もあります。通常であれば子犬は社会化期の遊びを通して咬みつき抑制を学びます。このような環境で育っている子犬は咬みつき抑制の基礎ができているため、十分な遊びができていれば新しい家族と遊ぶときも咬みつく力が抑制されます。さらに、人の手を咬んではいけないことを教えやすく比較的容易に改善していきます。
しかし早期に母犬や兄弟犬から分離された子犬、子犬の時期からお留守番が長い場合、飼い主との遊びが不十分な場合は甘咬みが問題化する傾向があります。
〇人を咬むという学習をさせない環境づくりと対応が重要
『咬ませてどう対応するのか』ではなく、『失敗しない環境づくりと対応』を検討するのが一番重要です。『人の手を咬んで楽しく遊んだ経験』を学習させなければ『人の手を咬むと良いことがある』と学習することはありません。『一緒に遊ぶときは必ずおもちゃを使う』ということを学習させましょう。
〇適切なおもちゃを選択して子犬の欲求を満たす
かじりたい欲求が強い4~5ヶ月齢の時期に、おもちゃを使用して発散させることはとても大切です。欲求を満たさずに咬みつき抑制ばかりを強いることは子犬にとってストレスがかかってしまいます。
おもちゃはその子に合ったものを選択・使用し、遊び方を観察しましょう。子犬が飲み込めるくらいの小さなおもちゃは避け、大きめのサイズを選ぶことをおすすめします。また、かじってほしくないもの(靴・スリッパ・靴下・家具など)をおもちゃとして与えてしまうと、その後もかじっていいものと認識される可能性があるため避けましょう。
おもちゃは、『人と一緒に遊ぶおもちゃ』と『ひとり遊び用のおもちゃ』の大きく2種類に分けられます。
▶人と一緒に遊ぶおもちゃ
ボール・ロープ・ぬいぐるみなどが、基本的に人と一緒に遊ぶためのおもちゃになります。
床に置いておくと一人で遊ぶ子もいますが、すぐに飽きてしまうことも多いため投げたり、引っ張ったりしながら一緒に遊んであげましょう。
▶ひとり遊び用のおもちゃ
お留守番、サークルやクレート内での待機などに活用できるおもちゃで、かじるタイプ・おやつを詰めて与えるタイプがあります。
コングやビジーバディシリーズなどのおやつやフードを詰めて与えるタイプの方が、食べ物を得ようと夢中になり、飽きることなくかじる欲求をみたすことができます。
~おもちゃにしてほしくないものを理解してもらうには~
子犬が「かじって良いもの」「かじってはいけないもの」を、自ら適切に判断することは基本的に無理なことです。興味をもったものならかじってみて、その結果楽しいことがあれば遊びの対象として学習します。基本的な対策としては、『環境設定』『行動ニーズを満たす』『関心を他のことに向けさせる』ということが必要となり、この対応をしていればかじってほしくないものをかじる可能性はかなり低くなります。
万が一飼い主にとって望ましくないものをかじっている場合は『ちょうだい』『交換』などの合図(喜んでその場から離れてくれるような口から物を離すトレーニング)を事前に行っておくと良いです。そのような対応をすることで、所有性攻撃行動などに進展する可能性も予防することができます。
❔所有性攻撃行動とは❔
犬が自分の所有物(食器、おやつ、お気に入りのおもちゃ、盗んだり見つけたものなど)だと思っているものを守るために、それに近づいたり、触れたり、取り上げようとする人や動物にみせる攻撃行動を言います。
〇人の手や足を使ってじゃれさせるような遊びはやめましょう
このような遊びは、子犬に人の手や足を咬むことを学習させていることになります。
〇子犬とのスキンシップの練習は、疲れた時間帯に実施
人とのおだやかな接触を学習させるために、十分に遊ばせた後や食後、トレーニング後などの子犬が疲れた時間帯に人とのスキンシップをとることが必要です。大好きなおやつやフードを与えたり、おもちゃを噛ませたりしながら行いましょう。
〇犬同士で遊ぶ機会をつくる
同年齢の子犬や遊びが好きな成犬と遊ばせることで、咬みつき抑制を効果的に学習させることができます。ですが、相性が悪い、体格が極端に異なる場合、犬嫌いになるきっかけを与えてしまうこともあるため注意が必要です。パピークラスなどの安全な場所を利用することも効果的です。
それでも甘咬されたら??
〇対応方法
『歯が人に当たると遊んでもらえない(×)』『歯が当たらないと遊んでもらえる(〇)』と分かりやすく伝えることで『〇か×』の2つのうち、良い結果が1つしかないので子犬が理解しやすいです。この対応方法は家族全員で統一する必要があります。
ですが、わざわざ手を咬ませるように仕向けてこの対応をすることは避けましょう。
やってはいけない対応
〇正の罰を与える
強い叱責、殴る、叩くなどの対応をすることで、一瞬子犬の行動は止まりその人に対してはその後咬む行動はしなくなるかもしれないですが、ほかの人への咬みつきを抑えることはできません。それだけでなく、恐怖を与えない人に対する咬みつき行動を増やしてしまう可能性や恐怖体験から人に対して恐怖を感じ、ますます咬むようになることもあります。このような対応は、甘咬みを予防できないだけでなく、人と信頼関係を構築する大切な時期の障害となり、心に傷を与えてしまうことにつながります。
〇咬まれたときに大げさに対応する
咬まれたときに「キャー」と大げさに反応する、手を払いのけるような動きをする、逃げようと走るなどの対応は、子犬を興奮させてしまいます。その結果『咬みつくと人は反応してくれて楽しい』と学習してしまうので、落ち着いて対応する必要があります。
甘咬みは放置しておくと、人もわんちゃんも傷つく可能性があります。
甘咬みは子犬にとって正常な行動ということを忘れず、適切に欲求を満たしてあげることを心がけましょう。
わんちゃん・ねこちゃんと生活していくなかで困ったことや不安なことなど、お気軽にご相談ください😊